STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第26回 言語聴覚士国家試験 第172問

言語発達障害学第26回
PECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)で最も重点が置かれている目標はどれか。
  1. 1.構文の形成
  2. 2.絵カードの選択
  3. 3.音声言語の表出
  4. 4.質問-応答関係の成立
  5. 5.自発的なコミュニケーションの開始 ✓

正答:5番

解説
■ 正答:5番 — 自発的なコミュニケーションの開始 PECSは「AAC(拡大代替コミュニケーション)」の手法であり、自閉症スペクトラム障害など音声言語の発達が困難な個人に対して、自発的にコミュニケーション行為を開始することを最大の目標としています。絵カードを交換するという行為自体が、相手への意図的な働きかけであり、社会的相互作用の基盤となるからです。 --- 【各選択肢の解説】 1. 構文の形成 ❌ 誤り。PECSは文法構造の習得を第一目標としていません。初期段階では単語相当の意味を持つ1枚のカードの交換から始まります。構文は後発的に発展する可能性がありますが、PECSの重点ではありません。 2. 絵カードの選択 ❌ 誤り。絵カードの選択はPECSを実行するための「手段」に過ぎません。目標は選択能力の獲得ではなく、その選択を通じた相手への意思伝達です。 3. 音声言語の表出 ❌ 誤り。むしろPECSは音声言語の発達が困難または遅延している個人を対象とした手法です。音声言語の表出は期待される副次的効果の可能性はありますが、最も重点が置かれた目標ではありません。 4. 質問-応答関係の成立 ❌ 誤り。質問-応答は相手からの働きかけを待つ受動的な対応です。PECSが重視するのは「相手に働きかける主体的な行為」であり、質問への返答ではなく、自分の意思を先制的に伝えることです。 5. 自発的なコミュニケーションの開始 ✅ 正しい。PECSの理念の中核であり、6つの段階(段階I:物の交換、段階II:遠距離と忍耐力、段階III:弁別、段階IV:句の構造、段階V:応答的コミュニケーション、段階VI:社会的コミュニケーション)において、段階Iから一貫して「相手にカードを手渡す」という自発的行為を強化することが目的です。 --- 【試験対策ポイント】 PECSの6段階進行モデル | 段階 | 焦点 | 特徴 | |---|---|---| | I | 物の交換 | 絵カード1枚を相手に手渡す(最も自発的) | | II | 遠距離と忍耐力 | 距離を広げる・待つ練習 | | III | 弁別 | 複数カードから選択 | | IV | 句の構造 | 「私は○○が欲しい」の構造 | | V | 応答的コミュニケーション | 相手からの「何がほしい?」に答える | | VI | 社会的コミュニケーション | より複雑な相互作用 | AAC手法の比較(よく混同される) | 手法 | 重点 | 対象者 | |---|---|---| | PECS | 自発的交換行為の開始 | 音声困難な自閉症など | | サイン言語 | 手指動作による言語体系 | 聴覚障害者(習得済みコミュ体系) | | VOD(音声出力装置) | 音声による出力 | 運動機能低下(脳性麻痺など) | PECSが「画期的」とされた理由 - 従来のAACは「相手からの質問に答える」受動的対応が多かった - PECSは「自分の欲求を主体的に伝える」能動性を重視する点で革新的 キーワード:「交換」「自発」「意図性」
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