第26回 言語聴覚士国家試験 第64問
高次脳機能障害第26回
「財布を盗まれたに違いない」と事実でないことを確信する症状が高頻度にみられるのはどれか。
- 1.血管性認知症
- 2.皮質基底核症候群
- 3.進行性核上性麻痺
- 4.レビー小体型認知症
- 5.アルツハイマー型認知症 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症では、記憶障害が顕著であるため、物を置いた場所を忘れ、それが盗まれたと誤解する「物盗られ妄想」が高頻度に現れます。この妄想は認知機能の低下に伴う二次的な現象として発生し、患者が現実との齟齬を説明しようとする試みの結果です。
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【各選択肢の解説】
1. 血管性認知症
❌ 誤り。血管性認知症は梗塞部位に応じた「段階的」な認知機能低下を示し、妄想の出現頻度は低いです。記憶障害も比較的軽微なことが多く、物盗られ妄想は特徴的ではありません。
2. 皮質基底核症候群
❌ 誤り。皮質基底核症候群は失行・失語・ミオクローヌスが主要症状で、認知症は比較的後期に出現します。物盗られ妄想は主症状ではありません。
3. 進行性核上性麻痺
❌ 誤り。進行性核上性麻痺は縦方向の眼球運動障害・姿勢不安定性・認知症が特徴ですが、妄想の出現頻度は低いです。認知症も前頭葉型の特徴を示します。
4. レビー小体型認知症
❌ 誤り。レビー小体型認知症は幻視(特に人物幻視)が特徴的で、初期段階では妄想よりも幻視が目立ちます。ただし経過中に妄想が出現することもありますが、物盗られ妄想の頻度はアルツハイマー型より低いです。
5. アルツハイマー型認知症
✅ 正しい。早期から顕著な記憶障害(特に新規記銘障害)を示し、物を置いた場所を忘れた事実を「盗まれた」と確信する物盗られ妄想が高頻度に認められます。これは記憶障害による現実と主観の矛盾を、患者が妄想で補完する機制によるものです。
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【試験対策ポイント】
認知症別の特徴的症状比較表
| 認知症タイプ | 初期症状 | 妄想 | 幻視 | その他特徴 |
|---|---|---|---|---|
| アルツハイマー型 | 記憶障害 | 物盗られ妄想(高頻度) | 後期 | 側頭葉内側萎縮 |
| レビー小体型 | 幻視(早期) | 低頻度 | 人物幻視◎ | パーキンソン症状 |
| 血管性 | 段階的低下 | 低頻度 | 低頻度 | 梗塞部位依存 |
| 皮質基底核症候群 | 失行・失語 | 低頻度 | 低頻度 | 運動症状優位 |
| 進行性核上性麻痺 | 眼球運動障害 | 低頻度 | 低頻度 | 姿勢不安定 |
物盗られ妄想が出現する理由
・新規記銘障害により「置いた」という行動の記憶が欠損
・患者は現在「ない」という現実を知覚しているため、その説明として妄想を形成
・認知機能が保たれている段階で特に顕著(記憶障害の自覚があるため)
・進行とともに見当識障害が強まるとむしろ減少することもある
紛らわしい選択肢の区別法
・幻視(見える)vs 妄想(確信):レビー小体型は幻視が先行、アルツハイマー型は妄想が先行
・記憶障害