第26回 言語聴覚士国家試験 第86問
嚥下障害第26回
喉頭挙上術に輪状咽頭筋切除術を併施した。術後の患者の状態として適切なのはどれか。
- 1.胃内容物の逆流が起こりやすくなる。 ✓
- 2.誤嚥性肺炎に罹患しなくなる。
- 3.頸部の回旋が難しくなる。
- 4.食形態の制限はなくなる。
- 5.発声できなくなる。
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — 胃内容物の逆流が起こりやすくなる。
喉頭挙上術と輪状咽頭筋切除術の併施は、喉頭を前上方に挙上する一方で、咽頭食道接合部(下咽頭括約筋)の機能を低下させる。その結果、嚥下時の上食道括約筋(輪状咽頭筋)の収縮機能が喪失され、胃内容物が咽頭方向に逆流しやすくなる。これは手術の必然的な副作用である。
---
【各選択肢の解説】
1. 胃内容物の逆流が起こりやすくなる。
✅ 正しい。輪状咽頭筋切除術により上食道括約筋機能が失われるため、食道から咽頭・喉頭への逆流が増加する。これは手術の欠点として認識されている。
2. 誤嚥性肺炎に罹患しなくなる。
❌ 誤り。喉頭挙上術と輪状咽頭筋切除術の併施により誤嚥リスクは低下するが、「罹患しなくなる」わけではない。逆流した胃内容物そのものが誤嚥源になる可能性もあり、完全な予防にはならない。
3. 頸部の回旋が難しくなる。
❌ 誤り。喉頭挙上術は喉頭を前上方に移動させるが、頸部回旋機能を有する胸鎖乳突筋や脊椎の機械的可動性に直接影響しない。また輪状咽頭筋切除術も頸部の回旋運動には無関係である。
4. 食形態の制限はなくなる。
❌ 誤り。手術後も患者の残存飲み込み機能によって食形態制限は存在する。「制限がなくなる」というのは過度な期待である。嚥下評価に基づいた段階的な食形態設定が必要。
5. 発声できなくなる。
❌ 誤り。喉頭挙上術は喉頭の位置を変えるが、声帯は存在し、代償的な発声は可能である。むしろ喉頭機能の一部を温存する手術設計である。完全な無音声にはならない。
---
【試験対策ポイント】
喉頭挙上術と輪状咽頭筋切除術の目的・効果・副作用
| 手術名 | 目的 | 効果 | 副作用 |
|---|---|---|---|
| 喉頭挙上術 | 喉頭を前上方に移動 | 嚥下時の喉頭閉鎖改善、誤嚥リスク低下 | 頭頸部の機械的影響は最小 |
| 輪状咽頭筋切除術 | 上食道括約筋の過度な収縮を除去 | 咽頭食道接合部の通過性向上 | 胃内容物の逆流リスク増加 |
重要否定知識
- 「手術後は誤嚥がなくなる」は誤り→リスク低減であり、完全予防ではない
- 「食形態制限なし」は誤り→嚥下機能に応じた段階設定は継続必須
- 輪状咽頭筋切除術で「発声喪失」は起こらない→声帯機能は温存される
頻出選択肢パターン
- 手術の目的と効果を混同させ、「完全に改善する」と誘導するダミー選択肢が常
- 手術の副作用(特に逆流)は必ず学習対象になる
- 嚥下障害手術は「最適化」「段階的管理」が実臨床の鉄則