第26回 言語聴覚士国家試験 第94問
補聴器・人工内耳第26回
48歳の男性。中等度感音難聴のため両耳に補聴器装用中。事務所で仕事をしているが、背後にあるコピー機が稼働するとうるさくて窓口対応が困難になると訴える。
適切でない対応はどれか。
- 1.ハウリングキャンセラーの設定を行う。 ✓
- 2.補聴器の指向性マイクロホン機能を設定する。
- 3.リモートマイクロホンを併用する。
- 4.窓口対応のために指さしで確認できるボードを用意する。
- 5.背後に吸音のパーティションを設置する。
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — ハウリングキャンセラーの設定を行う。
この患者の問題は「背後のコピー機が稼働するとうるさい」という環境騒音(バックグラウンドノイズ)への対応です。ハウリングキャンセラーは「マイクロホンからの出力音が再びマイクに入り込む笛音」を防ぐ機能であり、環境騒音を低減する機能ではありません。そのため、この臨床状況には適切でない対応です。
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【各選択肢の解説】
1. ハウリングキャンセラーの設定を行う。
❌ 誤り。ハウリングキャンセラーは、補聴器の出力音がマイクロホンに再入力される「ハウリング(笛音)」を防ぐ機能です。背後のコピー機音という環境騒音を低減する目的には無関係であり、この状況には適切ではありません。
2. 補聴器の指向性マイクロホン機能を設定する。
✅ 正しい。指向性マイクロホンは、正面からの音(窓口対応時の相手の声)は強調しつつ、側面・背面からの音(コピー機音)を減衰させます。この患者の「背後からの騒音」低減に最も直接的に有効です。
3. リモートマイクロホンを併用する。
✅ 正しい。窓口対応相手の襟元にリモートマイクを装着してもらえば、対面者の音声を直接補聴器に送信でき、背後のコピー機音の影響を受けにくくなります。信号対雑音比(S/N比)が改善されます。
4. 窓口対応のために指さしで確認できるボードを用意する。
✅ 正しい。視覚的なサポートにより、音声のみに依存しない対応が可能になり、騒音環境での聞き間違い・聞き落としを減らせます。補聴器装用者への環境調整の原則に合致しています。
5. 背後に吸音のパーティションを設置する。
✅ 正しい。物理的に背後からの騒音を吸収・遮断することで、補聴器に入力される環境騒音そのものを低減できます。環境調整による確実で実効的な対策です。
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【試験対策ポイント】
補聴器機能と環境騒音対策の区別表:
| 機能・対策 | 目的 | 対象 | 有効か? |
|---|---|---|---|
| ハウリングキャンセラー | 笛音(再入力)を防ぐ | 補聴器自身の出力 | ✅ ハウリング対策 |
| 指向性マイク | 前方音強調、側背面減衰 | 環境騒音 | ✅ この症例に有効 |
| リモートマイク | 対面者音声を直送 | 相手の話声 | ✅ この症例に有効 |
| パーティション | 物理的遮音 | 背後騒音源 | ✅ この症例に有効 |
| ビジュアルサポート | 音声理解補助 | コミュニケーション全体 | ✅ 併用推奨 |
ハウリングキャンセラーの本来の役割:補聴器の「フィードバック制御」機能であり、出力音量が過大な場合や装用位置がずれた場合に生じる笛音を防ぐためのもの。患者が訴える「騒音がうるさい」という環境音問題を解決しない。