第27回 言語聴覚士国家試験 第100問
補聴器・人工内耳第27回
74歳の男性。学童期に全盲になった。50歳過ぎから難聴が出現し補聴器を装用していたが、半年前に悪化し補聴器を装用しても全く音を感じられなくなった。有用な手段はどれか。
a.筆談
b.手話
c.点字
d.人工内耳
e.無線補聴援助システム
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — c. 点字、d. 人工内耳
この男性は学童期に全盲となっており、さらに50歳以降から難聴が進行し、半年前に補聴器を装用しても全く音を感じられなくなった状態です。つまり「視覚も聴覚も著しく障害されている」症例です。この状況で有用なコミュニケーション手段として、触覚を用いる点字と、外科的介入によって聴覚を再建する人工内耳が適切な選択肢となります。
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【各選択肢の解説】
1. a. 筆談
❌ 誤り。筆談は相手が書いた文字を視覚で確認することが前提です。この男性は全盲であるため、相手が書いた内容を読むことができず、コミュニケーション手段として成立しません。
2. b. 手話
❌ 誤り。手話は相手の手の動きを視覚で捉えることで成立します。この男性は全盲であるため、通常の視覚的な手話は使用できません。なお触手話という方法は存在しますが、一般に「手話」とだけ記載されている場合は視覚的なコミュニケーション手段を指します。
3. c. 点字
✅ 正しい。学童期に失明した場合、教育課程で点字を習得している可能性が極めて高いです。点字は視覚に依存せず触覚のみで読み書きができるため、視覚・聴覚の両方が障害されている本症例においても有効な情報入手・コミュニケーション手段となります。
4. d. 人工内耳
✅ 正しい。補聴器を装用しても全く音を感じられない状態は、高度~重度の感音難聴を示します。補聴器では効果が得られない場合、蝸牛内に電極を挿入して聴神経を直接電気刺激する人工内耳が有効な選択肢となります。聴覚を再獲得することはQOLの向上だけでなく、安全面でも大きな意味を持ちます。
5. e. 無線補聴援助システム
❌ 誤り。無線補聴援助システム(FMシステム・ロジャーなど)は、話者のマイクから直接音声を補聴器や人工内耳に送信してSN比を改善するシステムです。補聴器や人工内耳が機能していることが前提であり、「補聴器を装用しても全く音を感じられない」本症例では、まず補聴器に代わる手段(人工内耳)が必要であり、無線補聴援助システム単独では有用ではありません。
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【試験対策ポイント】
視聴覚二重障害(盲ろう)の症例では、残存する感覚モダリティを起点に考えることが重要です。
**補聴器と人工内耳の適応の違い**
| 手段 | 適応 | 仕組み |
|---|---|---|
| 補聴器 | 軽度~高度難聴(残存聴力あり) | 音を増幅して届ける |
| 人工内耳 | 高度~重度難聴(補聴器効果不十分) | 蝸牛に電極を挿入し聴神経を直接電気刺激 |
| 無線補聴援助システム | 補聴器・人工内耳装用者の騒音下での聞き取り補助 | SN比の改善(単独では機能しない) |
**点字が有効となる条件**:学童期(概ね6~12歳)以前または学童期に失明した場合、教育課程での点字習得が期待できます。成人後の失明では点字習得が困難な場合もあるため、**失明した年齢**は解説の重要な情報です。
**Usher症候群**(視聴覚二重障害の代表疾患)との関連も押さえておきましょう。先天性難聴に進行性網膜色素変性を合併し、成人後に視力を失うことがあります。本症例とは原因が異なりますが、視覚・聴覚両方の障害に対する包括的支援の考え方は共通しています。