第27回 言語聴覚士国家試験 第72問
言語発達障害学第27回
5歳の男児。自閉スペクトラム症と診断されている。ひらがなが読める。障害の特性に合わせた指導・指導として適切でないのはどれか。
- 1.共感できる遊びをする
- 2.予定の急な変更は避ける
- 3.要求の意図を伝達する遊びをする
- 4.写真や絵の視覚的ヒントを提示する
- 5.「つくえにのぼってはだめ」と書いてルールを示す ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 「つくえにのぼってはだめ」と書いてルールを示す
自閉スペクトラム症(ASD)児の場合、発展的には文字的支援は有効ですが、5歳時点では「理解のレベルと実行機能の発達段階」がズレています。特にルール遵守や行動抑制が必要な場面では、文字情報よりも「その場での具体的な対応(物理的制限・視覚スケジュール・身体ガイダンス)」が適切です。書いて示すだけでは理解と行動実行が結びつきにくく、むしろ混乱を招く可能性があります。
---
【各選択肢の解説】
1. 共感できる遊びをする
✅ 正しい。ASD児は社会的相互作用が困難ですが、「共感できる遊び」=本児の興味関心に基づいた活動を共有することで、関係構築と模倣学習の契機となります。音楽・系統立った活動・特定の物体操作など、本児が没頭できる遊びから始めることが有効です。
2. 予定の急な変更は避ける
✅ 正しい。ASD児は「予測可能性」と「一貫性」を求める傾向が強く(限局的な興味や反復行動)、急な変更は不安・パニック・行動問題につながりやすいです。スケジュールを事前に提示し、変更時は十分な予告と説明が必要です。
3. 要求の意図を伝達する遊びをする
✅ 正しい。ASD児は「非言語的コミュニケーション」が困難で、意図の共有や相手への要求が曖昧になりやすいです。遊びを通じて「要求の発信→相手の応答」という相互作用を具体的に練習することは、コミュニケーション発達の基盤です。
4. 写真や絵の視覚的ヒントを提示する
✅ 正しい。ASD児は「視覚的情報処理が相対的に強い」特性を持つため、スケジュール・行動の手順・社会的ルールなど、抽象的な内容を具体的な画像で示すことで理解と自発的行動が促進されます。視覚支援は標準的かつ有効な支援方法です。
5. 「つくえにのぼってはだめ」と書いてルールを示す
❌ 誤り。5歳時点では①ひらがな読字の流暢性が発展途上である、②文字情報だけでは「その行為をしたい衝動」と「ルール遵守」が結びつきにくい、③抽象的な言語指示よりも「具体的な物理的環境設定」や「その場での音声+身体ガイダンス」が効果的です。発展的には活用できますが、この段階では不適切です。
---
【試験対策ポイント】
発達段階と支援方法の適合性:
| 段階・特性 | 効果的な支援 | 不適切な支援 |
|---|---|---|
| ASD児・5歳 | 視覚支援(絵・写真) | 文字指示のみ(文字理解は進行中) |
| ASD児・5歳 | 環境設定・物理的制限 | 言語ルール説明(理解-実行ギャップ) |
| ASD児全般 | スケジュール提示・予告 | 急な変更・予測不可能な場面 |
| ASD児全般 | 興味関心に基づく活動 | 社会的規範の先制的教示 |
| ASD児のコミュ発達 | 相互作用遊び・要求表現練習 | 個別の文法指導・意味理解強要 |
重要な否定知識:
- 「ひらがなが読める=ルール文字が