第28回 言語聴覚士国家試験 第156問
失語症第28回
失語症の回復パターンでみられないのはどれか。
- 1.超皮質性運動失語から伝導失語に移行する。 ✓
- 2.超皮質性感覚失語から健忘性失語に移行する。
- 3.ブローカ失語から純粋語唖に移行する。
- 4.ウェルニッケ失語から超皮質性感覚失語に移行する。
- 5.全失語から健忘性失語に移行する。
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — 超皮質性運動失語から伝導失語に移行する。
失語症の回復過程では、損傷の程度が時間とともに軽減され、より軽度の失語タイプへ移行することが多いとされています。しかし、すべての移行パターンが存在するわけではありません。超皮質性運動失語と伝導失語は**病巣の位置が全く異なる**ため、この移行パターンは通常みられません。
---
【各選択肢の解説】
1. 超皮質性運動失語から伝導失語に移行する。
❌ **みられない。**超皮質性運動失語の責任病巣は**左前大脳動脈領域(補足運動野・SMA)**の周辺であり、伝導失語の責任病巣は**左縁上回・弓状束**(中大脳動脈領域)です。解剖学的位置が異なるため、このような横断的な移行パターンはみられません。
2. 超皮質性感覚失語から健忘性失語に移行する。
✅ 正しい。超皮質性感覚失語(側頭・頭頂葉後方の病変)は言語周辺野の広範な損傷に伴い、回復段階では損傷範囲が縮小することで、より軽度な健忘性失語へ移行する可能性があります。
3. ブローカ失語から純粋語唖に移行する。
✅ 正しい。ブローカ失語(左下前頭回)からより限局的な言語運動皮質の障害である純粋語唖(Broca野の最外側)への移行は、病巣の回復パターンとして観察されます。
4. ウェルニッケ失語から超皮質性感覚失語に移行する。
✅ 正しい。ウェルニッケ失語(左上側頭回)の患者が回復する過程で、損傷範囲が縮小し、より後方のより限局的な領域に限定されると、超皮質性感覚失語の特徴(復唱の比較的保全と意味理解の障害)へ移行することがあります。
5. 全失語から健忘性失語に移行する。
✅ 正しい。全失語(左大脳半球の広範な病変)は最も重症度が高く、回復過程では徐々に損傷範囲が限局化し、健忘性失語のような軽度の失語へ移行することが最もよくみられるパターンです。
---
【試験対策ポイント】
**失語症回復パターンの原則**:
失語症の回復は基本的に「広い病変 → 限局的な病変」「重症 → 軽症」へ移行する過程です。重要な例:
- 全失語 → 健忘性失語(最も頻繁)
- ウェルニッケ失語 → 伝導失語 → 健忘性失語
- ブローカ失語 → 健忘性失語
**責任病巣の位置関係を必ず確認する**:
| 失語タイプ | 責任病巣(領域) |
|---|---|
| ブローカ失語 | 左下前頭回(BA44/45) |
| ウェルニッケ失語 | 左上側頭回後部(BA22) |
| 伝導失語 | 左縁上回・弓状束(言語中枢を繋ぐ白質) |
| 超皮質性運動失語 | 左前大脳動脈領域(補足運動野・SMA周辺) |
| 超皮質性感覚失語 | 側頭葉後部・頭頂葉後部(言語周辺野後方) |
| 健忘性失語 | 側頭葉後下部・角回 |
| 純粋語唖 | 一次運動皮質(最外側のBroca野) |
**