第28回 言語聴覚士国家試験 第172問
言語発達障害学第28回
4歳の女児。ダウン症候群。単語を話し始めた。指導・支援で適切なのはどれか。
a.しりとり遊びをする。
b.指導者が示すことばを言わせる。
c.ジェスチャーは使わない。
d.絵本の読み聞かせをする。
e.指示は短い文で話す。
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:5番
解説
# 第28回 第172問 解説
■ 正答:**5番 — d. 絵本の読み聞かせをする。 e. 指示は短い文で話す。**
ダウン症候群の4歳児が単語発話を開始した段階での指導・支援は、**「現在の発達段階に適切な刺激」「分かりやすいコミュニケーション方法」「語彙拡大へのアプローチ」**を柱に選択する必要があります。本児は低緊張による構音器官の機能不全と言語発達の遅滞を両立させていますが、まずは「理解可能で楽しい環境」を優先します。
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## 【各選択肢の解説】
**a. しりとり遊びをする**
❌ 誤り。しりとりは**メタ言語スキル(言葉の音の構造を意識的に操作する能力)**を要求する高次の活動です。単語発話初期の本児には、音韻認識・語彙の十分な蓄積がまだなく、此の段階では認知負荷が極めて大きく不適切です。
**b. 指導者が示すことばを言わせる**
❌ 誤り。**「鸚鵡返し的な模倣発話の強要」**は、受動的な言語学習につながり、自発的なコミュニケーション意欲を低下させるリスクがあります。ダウン症児は特に「楽しい相互作用」を通じた自然な語彙拡大が望ましく、一方的な指示発話は動機づけを損なう可能性があります。
**c. ジェスチャーは使わない**
❌ 誤り。これは発達障害児の指導の根本的な誤解です。ダウン症児は**視覚的・身体的な具体物やジェスチャーを活用することで、抽象的な言語と現実の対応づけが容易になります**。むしろジェスチャーは推奨される支援方法であり、「言語と非言語信号の統合」は言語発達を促進します。
✅ **d. 絵本の読み聞かせをする**
正しい。以下の3つの理由から推奨されます:
1. **共同注意の育成**:大人と子どもが同一の対象(絵本)に注意を向けることで、語彙と視覚イメージの結びつきが強化
2. **文脈的学習**:物語の展開と登場人物の行動から「ことば」の意味が自然に理解される
3. **楽しい相互作用**:强要感のない、親密な関わりの中で意欲的な言語学習が促進
✅ **e. 指示は短い文で話す**
正しい。以下の2つの理由から推奨されます:
1. **聴覚的ワーキングメモリの過負荷を防止**:ダウン症児は通常の発達児に比べて音韻ループ(言語情報の一時保持機構)の容量が限定されており、長い複文は聞き取り・理解が困難
2. **明確性の向上**:短い単文(例:「これ、わんわん」)は指示対象を明確にし、誤解を減らします
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## 【試験対策ポイント】
### ダウン症候群における言語発達支援の原則
| 段階・症状 | 支援のポイント | 避けるべき対応 |
|---|---|---|
| **単語発話初期(本問のケース)** | 共同注意・ジェスチャー併用・短文。楽しさ優先 | 鸚鵡返しの強要・メタ言語要求・長文指示 |
| **2語文へ向かう段階** | 拡張応答(大人が子どもの発話を文法的に広げ直す)・ごっこ遊び | 文法的正確さの過度な矯正