第28回 言語聴覚士国家試験 第8問
内科学第28回
舌の線維束性収縮を呈する疾患はどれか。
- 1.前庭神経炎
- 2.てんかん
- 3.重症筋無力症
- 4.筋ジストロフィー
- 5.脊髄性筋萎縮症 ✓
正答:5番
解説
# 第28回 第8問 解説
■ 正答:5番 — 脊髄性筋萎縮症
舌の線維束性収縮(fasciculation)は、**下位運動ニューロン(脊髄前角細胞)の障害**を示す病理学的徴候です。脊髄性筋萎縮症(SMA)は脊髄前角細胞の変性により線維束性収縮を呈します。一方、他の選択肢は異なる神経系統の障害を代表しており、線維束性収縮を特徴的症状として示しません。
---
【各選択肢の解説】
1. **前庭神経炎**
❌ 誤り。前庭神経(脳神経Ⅷ)の炎症により回転性めまいと眼振が生じます。舌の線維束性収縮とは無関係です。
2. **てんかん**
❌ 誤り。大脳皮質の異常な過剰放電による発作疾患。舌の線維束性収縮は伴いません。発作中に舌咬傷が生じることはありますが、線維束性収縮ではありません。
3. **重症筋無力症**
❌ 誤り。神経筋接合部(アセチルコリン受容体)の障害です。**下位運動ニューロンの障害ではない**ため線維束性収縮を呈しません。反復運動で疲労する弛緩性構音障害・嚥下障害が特徴です。
4. **筋ジストロフィー**
❌ 誤り。骨格筋自体の一次性障害(ジストロフィン遺伝子異常など)。神経細胞の障害がないため線維束性収縮を呈しません。進行性の筋力低下・筋萎縮が特徴です。
5. **脊髄性筋萎縮症**
✅ **正しい。** 脊髄前角細胞の変性による下位運動ニューロン障害です。運動ニューロンの脱落により、その支配領域の筋線維が不規則に収縮します。これが**線維束性収縮**として肉眼的に観察されます。舌・咬筋などで特に顕著です。
---
【試験対策ポイント】
**線維束性収縮を呈する疾患の系統的理解**
線維束性収縮(fasciculation)は**下位運動ニューロン(脊髄前角細胞・脳神経核)の障害の指標**です。
| 疾患 | ニューロン障害の部位 | 線維束性収縮の有無 |
|---|---|---|
| **脊髄性筋萎縮症** | 脊髄前角細胞(下位) | ✅ **あり**(舌・咬筋に顕著) |
| **ALS** | 脊髄前角細胞+皮質脊髄路 | ✅ **あり** |
| **末梢神経炎** | 末梢神経 | ✅ **あり** |
| 重症筋無力症 | 神経筋接合部 | ❌ **なし** |
| 筋ジストロフィー | 筋細胞 | ❌ **なし** |
| てんかん | 大脳皮質(上位) | ❌ **なし** |
| 前庭神経炎 | 前庭神経(脳神経Ⅷ) | ❌ **なし** |
**臨床での見分け方**
- 線維束性収縮を見たら→**下位運動ニューロン障害**を疑う
- **舌の線維束性収縮+舌の萎縮+舌力低下** → **球麻痺型ALS**または**SMA**
- **重症筋無力症の舌**では線維束性収縮がなく、むしろ疲労で舌が動かなくなることが特徴
- **