PTカコモン理学療法士国家試験 過去問・解説

第44回 理学療法士国家試験 午前 第22問

神経疾患理学療法第44回午前

第44回 理学療法士国家試験 午前 第22問(神経疾患理学療法)の正答は 2 です。小脳性運動失調では、主動筋と拮抗筋の収縮のタイミング・力量・持続時間の調節が破綻し、測定障害(dysmetria)や反復拮抗運動不能(adiadochokinesis)が生じます。

問題
55歳の男性。3年前からろれつが回らず歩行が不安定で介助が必要であり、起き上がるとめまいが起こる。上肢の測定障害のためADLが制限されている。頭部MRI(別冊No.5)を別に示す。 この患者に対する適切な治療計画はどれか。
第44回午前第22問 図
  1. 1. 四つ這い訓練
  2. 2. 主動筋と拮抗筋との協調運動訓練
  3. 3. 反動を利用した立ち上がり訓練
  4. 4. ロフストランド杖による歩行訓練
  5. 5. 改造自動車を利用した移動の指導

正答:2番

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解説
■ 正答:2番 — 主動筋と拮抗筋との協調運動訓練

小脳性運動失調では、主動筋と拮抗筋の収縮のタイミング・力量・持続時間の調節が破綻し、測定障害(dysmetria)や反復拮抗運動不能(adiadochokinesis)が生じます。したがって治療の中心は、主動筋と拮抗筋を協調して働かせる練習(同時収縮による関節の固定性向上を含む協調性訓練)になります。


【各選択肢の解説】

1. 四つ這い訓練
❌ 誤り。支持基底面を広げた肢位での安定性練習にはなりますが、この患者は介助があれば歩行できる段階です。移動手段を四つ這いに戻す指導は活動レベルを下げてしまいます。
2. 主動筋と拮抗筋との協調運動訓練
✅ 正しい。失調の本質は主動筋・拮抗筋の協調不全です。両者を協調させる練習(重錘や弾性包帯による固有感覚入力の増強、関節を固定する同時収縮の練習など)が第一選択となります。
3. 反動を利用した立ち上がり訓練
❌ 誤り。失調では勢い(反動)を使うと運動を途中で止められず制御がさらに困難になります。「ゆっくり・分節的に・止められる速度で」が原則で、反動の利用は転倒リスクを高めます。
4. ロフストランド杖による歩行訓練
❌ 誤り。杖は支持点が少なく不安定で、上肢にも測定障害があるため接地位置が定まりません。失調では歩行器など支持性の高い(できれば重量のある)用具を選びます。
5. 改造自動車を利用した移動の指導
❌ 誤り。上肢の測定障害と体幹失調があり、さらに起き上がりでめまいも生じます。この状態での自動車運転は危険で適応になりません。

【試験対策ポイント】

失調に対する運動療法の原則

方針具体的方法
固有感覚入力を増やす重錘負荷(0.5〜1kg)・弾性包帯・体重負荷
関節の固定性を高める主動筋と拮抗筋の同時収縮訓練
運動の分解と再統合Frenkel体操(視覚代償を用いた反復練習)
環境調整重い歩行器・重量のある食器・手すり

「反動を使う」「速い運動を求める」「支持性の低い杖」は失調ではすべて逆効果と覚えておきましょう。なおFrenkel体操は本来、脊髄癆など深部感覚障害による感覚性失調に対する方法で、小脳性失調にも協調性訓練として応用されます。

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