PTカコモン理学療法士国家試験 過去問・解説

第45回 理学療法士国家試験 午後 第12問

地域理学療法第45回午後

第45回 理学療法士国家試験 午後 第12問(地域理学療法)の正答は 5 です。1週前から嚥下障害・左下肢の脱力としびれの増強・夕方の微熱という新しい症状が出現しています。

問題
56歳の女性。10年前に多発性硬化症と診断され、3回の入院歴がある。1年前からベッド上で生活している。1週前から、飲み込みの悪さ、左下肢の脱力感およびしびれの増強を感じるようになった。夕方になると軽度の発熱がある。2週に1度の在宅理学療法で訪問した際に優先すべき対応はどれか。
  1. 1. 全身の保温を促す。
  2. 2. 腹式呼吸の指導を行う。
  3. 3. 下肢の筋力増強訓練を行う。
  4. 4. 直接嚥下訓練を家族に指導する。
  5. 5. 現状を把握し主治医に連絡する。

正答:5番

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解説
■ 正答:5番 — 現状を把握し主治医に連絡する。

1週前から嚥下障害・左下肢の脱力としびれの増強・夕方の微熱という新しい症状が出現しています。これは多発性硬化症の再発(増悪)か、あるいは尿路感染・誤嚥性肺炎などの感染症を示唆する所見であり、いずれも医学的な診断と治療方針の変更を要します。訪問した理学療法士が独自に訓練を進めるのではなく、まず現状を正確に把握して主治医に報告・連絡することが最優先です。


【各選択肢の解説】

1. 全身の保温を促す。
❌ 誤り。多発性硬化症は体温が上がると症状が悪化する(Uhthoff現象)ため、保温を促すのは逆効果です。発熱もあり、むしろ体温上昇を避ける必要があります。
2. 腹式呼吸の指導を行う。
❌ 誤り。呼吸練習自体は有用ですが、原因不明の発熱と嚥下障害がある状況での優先順位は低く、医学的評価が先です。
3. 下肢の筋力増強訓練を行う。
❌ 誤り。増悪が疑われる時期の負荷は症状悪化を招きます。この状況で行うべき介入ではありません。
4. 直接嚥下訓練を家族に指導する。
❌ 誤り。嚥下機能の評価をしないまま実際に食物を用いる直接訓練を導入するのは、誤嚥・窒息のリスクが高く危険です。発熱は誤嚥性肺炎の可能性も示唆しています。
5. 現状を把握し主治医に連絡する。
✅ 正しい。新たな神経症状の出現と発熱は再発または感染症を疑う所見であり、バイタルサインや症状の経過を把握したうえで速やかに主治医へ報告するのが理学療法士の適切な対応です。

【試験対策ポイント】

在宅・訪問場面の問題では、「いつもと違う変化」=まず医師へ連絡が原則です。理学療法士が単独で判断してはいけないサインを整理します。

  • 発熱・血圧や脈拍の異常
  • 新たな神経症状の出現や増悪
  • 嚥下障害・むせ込みの出現(誤嚥性肺炎のリスク)
  • 意識レベルの変化、原因不明の疼痛
多発性硬化症では、感染や発熱そのものが再発の引き金にもなります。症状の増悪と発熱が同時にあるときは、まず感染の有無を医学的に確認する必要があります。訪問頻度が2週に1度と低い場合、次回訪問まで放置するリスクが大きい点も判断材料になります。

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