PTカコモン理学療法士国家試験 過去問・解説

第47回 理学療法士国家試験 午前 第45問

神経疾患理学療法第47回午前

第47回 理学療法士国家試験 午前 第45問(神経疾患理学療法)の正答は 2 です。筋萎縮性側索硬化症(ALS)では呼吸筋の筋力低下により拘束性換気障害が進行し、深呼吸ができないことから胸郭の可動性が徐々に低下(胸郭コンプライアンス低下)します。

問題
呼吸機能が低下してきた筋萎縮性側索硬化症患者に対する呼吸理学療法で適切なのはどれか。
  1. 1. 口すぼめ呼吸の指導
  2. 2. 胸郭のストレッチ
  3. 3. 呼気時の胸郭圧迫
  4. 4. 腹式呼吸の指導
  5. 5. 有酸素運動

正答:2番

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解説
■ 正答:2番 — 胸郭のストレッチ

筋萎縮性側索硬化症(ALS)では呼吸筋の筋力低下により拘束性換気障害が進行し、深呼吸ができないことから胸郭の可動性が徐々に低下(胸郭コンプライアンス低下)します。胸郭のストレッチや徒手的胸郭伸張は柔軟性を保ち、換気効率の維持や無気肺の予防に有効で、筋への過負荷にもならないため適切です。


【各選択肢の解説】

1. 口すぼめ呼吸の指導
❌ 誤り。口すぼめ呼吸は気道の虚脱を防いで呼気を助ける手技で、COPDなど閉塞性換気障害の適応です。ALSは拘束性換気障害であり、適応となりません。
2. 胸郭のストレッチ
✅ 正しい。胸郭可動性の維持は拘束性換気障害への基本的アプローチで、肺・胸郭コンプライアンスの低下や無気肺の予防につながります。
3. 呼気時の胸郭圧迫
❌ 誤り。排痰時に軽度用いることはありますが、呼吸筋力が低下したALSに強い呼気圧迫を行うと1回換気量をさらに減らし、換気不全を悪化させます。ALSで重視されるのは吸気を助ける手技(舌咽呼吸・バッグによる最大強制吸気量の確保)と、咳の介助(徒手的咳介助・機械による咳介助=MI-E)です。
4. 腹式呼吸の指導
❌ 誤り。ALSでは横隔膜自体が障害されるため、腹式呼吸を強調しても効果が乏しく、努力性の呼吸練習は過用性筋力低下(overwork weakness)を招く恐れがあります。
5. 有酸素運動
❌ 誤り。呼吸機能が低下してきた時期の有酸素運動は疲労と過用性筋力低下のリスクが高く、適切ではありません。ALSの運動療法は低負荷・短時間で、疲労を残さない範囲にとどめます。

【試験対策ポイント】

ALSの理学療法で押さえるべき原則です。

  • 過用性筋力低下(overwork weakness)を避ける:高負荷抵抗運動・疲労困憊まで行う運動は禁忌に近い。翌日に疲労を残さない強度で
  • 呼吸管理:%VC・最大強制吸気量・咳のピークフロー(CPF)を定期評価。CPFが低下すれば咳介助やMI-Eを導入。進行に応じてNPPV(非侵襲的陽圧換気)→気管切開下人工呼吸
  • 保たれる機能(陰性症状):眼球運動・膀胱直腸機能・感覚・褥瘡ができにくいことが「ALSの四大陰性徴候
  • コミュニケーション支援:構音障害の進行に応じて透明文字盤・意思伝達装置を早期から準備
「閉塞性=口すぼめ呼吸」「拘束性=胸郭可動性の維持と吸気の補助」という対応が本問の判断軸です。

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