PTカコモン理学療法士国家試験 過去問・解説

第48回 理学療法士国家試験 午後 第47問

神経疾患理学療法第48回午後

第48回 理学療法士国家試験 午後 第47問(神経疾患理学療法)の正答は 5 です。筋萎縮性側索硬化症(ALS)では呼吸筋(横隔膜・肋間筋)の筋力低下が進行し、胸鎖乳突筋や斜角筋などの呼吸補助筋が過剰に働いて疲労・過緊張をきたします。

問題
筋萎縮性側索硬化症患者で安静臥位時のPaO₂が60 Torrであった。呼吸理学療法で適切なのはどれか。
  1. 1. 呼吸筋増強訓練
  2. 2. 舌咽呼吸の指導
  3. 3. 端座位保持訓練
  4. 4. 腹筋の筋力増強訓練
  5. 5. 頸部筋リラクセーション

正答:5番

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解説
■ 正答:5番 — 頸部筋リラクセーション

筋萎縮性側索硬化症(ALS)では呼吸筋(横隔膜・肋間筋)の筋力低下が進行し、胸鎖乳突筋や斜角筋などの呼吸補助筋が過剰に働いて疲労・過緊張をきたします。PaO₂ 60 Torrという呼吸不全の状態では、筋力増強で負荷を掛けることは過用性筋力低下を招くため禁忌であり、呼吸補助筋のリラクセーションによって呼吸仕事量を減らす対応が適切です。


【各選択肢の解説】

1. 呼吸筋増強訓練
❌ 誤り。ALSでは運動ニューロンが変性しているため、負荷をかけた筋力増強は過用性筋力低下(overwork weakness)を助長します。まして呼吸不全の段階で呼吸筋に負荷を加えるのは危険です。
2. 舌咽呼吸の指導
❌ 誤り。舌咽呼吸(カエル呼吸)は舌・咽頭・喉頭の筋を使って空気を飲み込む方法で、球麻痺を伴うALSでは習得が困難です。ポリオや高位頸髄損傷など球機能が保たれた例に用いる手技です。
3. 端座位保持訓練
❌ 誤り。PaO₂ 60 Torrの低酸素状態で抗重力位の保持を課すのは酸素消費を増やすだけで、呼吸状態の改善にはつながりません。
4. 腹筋の筋力増強訓練
❌ 誤り。1と同様に過用性筋力低下のリスクがあります。咳嗽力の補助が必要な場合は筋力増強ではなく、徒手介助咳嗽や機械による咳介助(MI-E、カフアシスト)で対応します。
5. 頸部筋リラクセーション
✅ 正しい。呼吸補助筋である胸鎖乳突筋・斜角筋・僧帽筋上部の過緊張をゆるめることで呼吸仕事量と酸素消費を減らし、呼吸困難感を軽減できます。

【試験対策ポイント】

ALSの理学療法は「筋力をつける」ではなく「残存機能を消耗させない」が原則です。

やることやらないこと
関節可動域運動、良肢位保持、廃用予防の低負荷運動最大努力の筋力増強訓練(過用性筋力低下)
呼吸補助筋のリラクセーション、呼吸介助手技呼吸筋への抵抗負荷
排痰援助(体位排痰・徒手介助咳嗽・MI-E)疲労を残す長時間の訓練
NPPV導入支援、コミュニケーション手段の確保

ALSは陰性四徴(眼球運動障害・膀胱直腸障害・感覚障害・褥瘡が起こりにくい)が有名ですが、人工呼吸器による長期生存例ではこれらも出現しうる点も押さえておきましょう。

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